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第4章 総括と考察|世界第4位 日本のコーヒー市場の変遷と特質 ~輸入と消費~

世界第4位の市場規模を誇る日本のコーヒー市場は、世界でも例を見ない市場の特質と消費者嗜好があります。本稿では日本のコーヒー市場に着目し、細部にわたる市場分析から、日本のコーヒー市場の特質と特有な消費者志向を四章構成のレポート形式でお伝えしていきます。

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▼▼▼前回の復習▼▼▼

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研究結果

第1章では本論文の目的と対象を述べた。その目的と対象は、日本の国民1人当たりの消費量が世界的に見て低い要因を、日本のコーヒー市場の分析を通し、その要因と市場の特質を検討することである。コーヒーは幅広い市場を形成しているため、その第一歩として家庭用レギュラーコーヒー市場について考察していくことにした。そして先行研究についての説明し、家庭用レギュラーコーヒー市場を中心に日本のレギュラーコーヒー市場の特質について研究していくことを述べた。各章での研究結果は次のようである。

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第2章では、コーヒーの生豆生産から製品の消費に至るプロセスとその概要を述べた。まず、コーヒー豆の生産は、気候条件に適した限られた地域でのみ栽培ができる。それらの地域はコーヒーベルトと呼ばれ、南北位25度の赤道に沿った約60か国で栽培されている。最大の生産国となっているのはブラジルであり、世界で流通しているコーヒー豆の約35%である約50,000,000袋(60kg / 1袋)を年間で生産している。その結果、ブラジルのコーヒー豆生産は、国際相場に大きな影響を及ぼすまでの規模となっている。

一方の消費の面では、主にヨーロッパを中心とした北半球の国でコーヒーを輸入・消費している。コーヒーの主要輸入国に関する輸入量や消費量のデータを分析すると、コーヒーの主要消費国はヨーロッパに多いことが分かる。生豆輸入国は最大がアメリカで26,066,000袋(2012年)、次いでドイツ21,816,000袋、イタリア8,691,000袋、日本7,025,000の順になっている。アメリカとドイツ両国の輸入量は突出して多くなっている。

日本の生豆の輸入は、戦後1950年の生豆輸入の再開以降、1960年の生豆輸入自由化を発端として2006年まで輸入量が落ちることなく成長している。2006年422,696tで輸入量がピークとなった以降は減少し、2012年では379,982tとなっているが、世界で4番目に多いコーヒー輸入国である。

消費量では、輸入量最大のアメリカが最大の消費国で22,238,000袋(2012年)となっている。次いでドイツ8,830,000袋、日本7,131,000袋、フランス5,789,000袋の順である。しかし、国民1人当たりの消費量で換算すると、ルクセンブルクが一番高く、次いでフィンランドデンマークの順となる。ルクセンブルクが高い要因としては嗜好品に対する関税が安いため隣国からの消費者も多いことが考えられる。国民1人当たりの消費量ではアメリカ15位、日本も17位と位置は低下する。

日本のコーヒー消費量は1990年時点では5,060,000袋で世界第4位だったが、それ以降増加していき、2012年では第3位に上昇している。

コーヒー豆の主要輸入国であるドイツ、イタリア、フランス、ベルギーの各国の需給状況を見てみると、自国で加工消費されるだけでなく、再輸出を行っている国々が多くあることが分かる。特に、ドイツとベルギーは自国消費量よりも再輸出量の方が多くなっている。ドイツの生豆輸入に対する再輸出量の割合は高く約30%とされている。主な輸出先はE.U圏内で、ヨーロッパのコーヒートレードセンターとも言われている。E.Uでは各国が生豆輸入、加工、再輸出の役割を持っておりコミュニティのような形を形成している。

日本では輸入した生豆の90%以上が国内で消費されており、E.U諸国のような再輸出はほぼ皆無に等しい。2013年における日本のコーヒーの需給関係は、供給量が624,783tに対し消費量446,392tである。このうちレギュラーコーヒー向けが353,874t、インスタントコーヒー向けが92,518tとなっており、レギュラーコーヒー向けの消費が約8割と大半を占めている。国内におけるレギュラーコーヒーの需要は、家庭用、業務用、工業用から成り立っている。

日本の嗜好飲料の生産量を見ると、2012年の嗜好飲料の生産量は、茶類が187,762tなのに対し、コーヒーは296,600tで茶類よりも多くなっている。この296,600tの内訳は、レギュラーコーヒーが149,000t、工業用コーヒーが102,600t、インスタントコーヒーが45,000tである。レギュラーコーヒーに次いで缶コーヒーを主用途とする工業用コーヒーの生産量が多くなっている。

1960年に生豆輸入が自由化されて以降、近年まで需要は成長してきた。1970年から2012年の需要別推移を見ると業務用の成長が停滞する一方、家庭用と工業用の需要が大きく成長してきた。家庭用製品の生産量は1970年で2,592tだったが、2010年では76,900tまで成長し、工業用では、1975年で3,600tだったのが、2012年まで成長し続け102,600tまで成長している。近年の3つの需要形態のそれぞれの生産量は工業用102,600t(2012年)、家庭用76,500t、業務用65,400tで工業用が最大の生産量を誇っている。工業用製品の主軸となっている缶コーヒーは日本独自のオリジナルな製品であり、この製品の需要が大きいということが日本のコーヒー市場の1つの特質といえる。

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第3章では、1990年頃から伸びた家庭用レギュラーコーヒー市場の成長と特質を見て分析した。家庭用レギュラーコーヒーは様々な製品形態を持ち、且つ、袋詰め製品の需要が近年増加していることから、袋詰め家庭用レギュラーコーヒーに着目し日本市場の特質を研究した。

まず、家庭用レギュラーコーヒーの製品形態は簡易型、袋詰め、缶詰め、焙り豆の4つの形態があり、1990年代後半を境目に缶詰めから袋詰めに需要が変化した。その変化の要因をメーカーの製品戦略の分析を通して、製品の特性と多様性の観点から検討した。まずメーカーの製品戦略を見ると、1990年代後半に大手メーカーであるUCCキーコーヒーが先陣を切って動いている。それまでの主流であった缶詰型の製品を一転させ、紙缶で容量を少なくしている。品質の優れた豆を使用し、その容器にはコーヒーの本格的な味が楽しめるといった記載によって、消費者に製品特長をよく伝えられるように容器の工夫がされている。これを皮切りに競合する他のメーカーも同様に製品差別化による競争が進んだ結果、袋詰製品の需要が拡大していった。缶詰め型製品の生産量は1994年から2000年にかけて21,500tから4,350tと急減し、一方の袋詰め製品は2,000tから38,500tに急増した。

コーヒー豆には品質によるグレードがあり家庭用レギュラーコーヒーの製品特性を形成している。スペシャルティコーヒー、サステイナブルコーヒー、プレミアムコーヒー、コマーシャルコーヒー、ローグレードコーヒーの5つに分けられる。最も品質の優れているスペシャルティコーヒーは2003年に設立された日本スペシャルティコーヒー協会によって普及したもので、それ以前はプレミアムコーヒーが主に市場に流通していた。欧州など海外市場ではプレミアムコーヒー以下のコマーシャルコーヒーやローグレードコーヒーが主に流通しており、高品質な豆はニッチとして存在しているとされている。加えて、当協会の調査結果から、日本では近年このスペシャルティコーヒーの売上の伸びが確認されている。高品質故に価格も高いにも関わらず、高品質商品の需要が高まっているのである。

日本の家庭用レギュラーコーヒー製品の特長には、製品数の多さ、多様性がある。この点における考察は、POSデータを基に分析した。個人消費量で日本の2倍以上のコーヒーを飲んでいるドイツを例に挙げると、大手焙煎メーカーの販売製品数は一桁台とされているのに対し、日本のメーカーの販売製品数は悠々の二桁に達している。大手に限らず中小メーカーの製品群を分析しても二桁台の製品数販売を行っているところは多くあることから、日本のコーヒー市場における製品数は多さと差別化製品の多様性が確認できる。

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以上のようにメーカーの製品戦略、製品の特性と多様性の観点から見ると日本の家庭用レギュラーコーヒー市場の特質として、高品質な製品の需要が高く製品数が多いということが分かる。

しかし、日本の国民1人当たりの消費量は高くない。輸入量世界4位、消費量世界3位なのに対し国民1人当たり消費量では17位なのである。焙煎豆小売価格の主要5か国の比較結果から見ると、1位のイタリアに次いで高くなっている。高品質・高価格志向という日本人の消費者嗜好が1人当たりの消費量の伸びを抑えている一因ではないだろうか。

 

考察と今後の展望

コーヒーは、世界中で消費されている飲料である。世界で最も消費量が多いアメリカは、国土が広く人口も多く国内産業も発達している。消費量の多いヨーロッパの国々は多くの国が隣接している国が多くあり、産業の発展やその他経済活動において分業化し双方が協力し合う関係が形成される。その点、日本は国土の狭い島国でありながら、世界でもかなり大きなコーヒー市場を持ち、今日までに世界の主要国と言われるまでに市場が発達している。

本研究の結果として、日本は大きなコーヒー市場を持っているものの、国民1人当たりの消費量が低いことの要因は、日本の消費者は高品質・高価格嗜好であることという結果になった。では、価格を低く設定すればこの消費量は伸びるのかと言えば、そのようなことはないと考えられる。価格を下げることは、品質も下げざるを得ず、高品質・高価格嗜好である日本人消費者には適さない。かえって消費量を下げてしまう可能性もある。高品質・高価格嗜好であることから、スペシャルティコーヒーの需要を更に増加させるのではないだろうか。また、本稿で述べたように、日本人は外国人に比べ「浄土」と言われる清らかで穢れが無いもの好む日本人独特の美的意識を持つこともその需要増加に繋がると考える。そのスペシャルティコーヒーにおいては、著者はスペシャルティコーヒーという名称の知名度がまだ低いと実感している。そのため、まず第一に、メーカー側は、その知名度を上げて、スペシャルティコーヒーの存在を多くの消費者に認知してもらうことが重要だと考える。そして、最終的には私たち最終消費者がどう評価するかが重要となる。品質が高いコーヒーも低いコーヒーも味や香りは変わらないと判断してしまえば、更なる需要の成長は期待が出来ない。メーカーは製品を通じて最終消費者とのコミュニケーションを図り製品の特性をよく伝えると共に、高品質製品の差別化やブランド化といった戦略が重要となってくるのではないだろうか。

今後の課題として、国民1人当たりの消費量の低い要因を更に追求していくことが挙げられる。本研究では、消費者の高品質・高価格志向が一因であるという結論に至ったが、著者は、更に追求すればまた新たな要因が発見できるのではないかと予測している。コーヒー市場は幅が広く、複雑であるため容易に見つけ出すことは難しい。しかし、新たに発見された要因が、嗜好飲料市場全体の出荷実績が9,399億円(2012年)あるうち、5,335億円と嗜好飲料類で1番大きな市場を形成しているコーヒー市場を更に発展させていくことに繋がれば幸いである。  

 

参考文献・資料・URL

 

参考文献

  • 辻村英之 「増補版 おいしいコーヒーの経済論「キリマンジャロ」の苦い現実」 太田出版 
  • 山田早苗 「食品知識ミニブックスシリーズ 珈琲入門」 日本食糧新聞社 
  • 正岡幹之 二宮正司 「レギュラーコーヒーの飲用状況と飲用促進策の一考察 大阪経大論集 第64巻第4号 2013年11月 
  • 小川長 「缶コーヒー市場の変貌と商品戦略」

 参考資料

  • 日本食糧新聞社 食品産業事典 改訂第九版 下巻  日刊経済通信社 酒類食品産業の生産・販売シェア 2013年度版 
  • 日刊経済通信社 酒類食品産業の生産・販売シェア 2011年度版  全日本コーヒー協会 コーヒーマイスターテキストブック 
  • 日刊経済通信社 酒類・食品産業 on GRAPHICS -21世紀への設計- 酒類・食品統計月報500号記念増刊号 
  • 日本食糧新聞社 食品トレンド2012~2013 
  • 食生活データ 総合統計年報2014年版 三冬社 
  • スペシャルティコーヒーマーケット市場調査要約 日本スペシャルティコーヒー協会

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